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少し前に、ヤミ金による押し貸しや架空請求などの悪質な手法について書いたが、今日テレビのニュースを見ていたら、また新しい手法が出てきているらしい。
なんと、弁護士や司法書士のフリをして、「受任通知を送ってあげる、債務整理をしてあげる」と言ってお金を振り込ませるのだそうだ。
ヤミ金と言えば、執拗で脅迫的な取立て行為を誰もが想像するが、その裏を掻くかのように、優しい口調で、「私は弁護士です。借金でお困りなんでしょう。私が整理してあげますから、着手金を振り込んでくださいね。そうしたらすぐに取り立てが止まりますよ」と電話で言ってくるのだそうだ。
弁護士に債務不存在などを主張され、煮え湯を飲まされているヤミ金業者は少なくないのだろう。いわば「敵」になりすます、という新手の戦法だ。
私の知る限り、電話セールスをする弁護士や司法書士はいない。
私の弁護士さんに聞いても、弁護士会の債務整理相談窓口は連日予約でいっぱいで、電話セールスをしてまで新規の依頼者を探すような余裕はとてもないそうだ。
こうなってくると、「闇」が付こうが付くまいが「金融業者」であるとはとても言えない。正真正銘の「詐欺」だ。暴力行為や出資法違反には問えないだろうが、「詐欺罪」なのだから、どんどん取り締まって欲しいものだ。
しかし、このような「弁護士騙り」が登場し、それにまんまと騙されてお金を振り込んでしまう人がいる、というのは、単にヤミ金のセールストークが巧妙なだけが理由ではないとも思う。
一般の人から見ると、「弁護士」という人たちが、余りに遠い存在だ、という側面も大いに関係しているのではないだろうか。
私も初めて弁護士に相談する時はそうだったが、このサイトに相談に来る人たちを見ていても、「法律相談に行く」ということになかなか踏み切れない人が少なくない。日頃まったくお付き合いのない「弁護士」という種類の人たちに、必要以上に畏怖の念を抱いている。弁護士は「気軽に法的なことを相談できる人」ではなく、「高いお金を積んで、頭を下げて、ご指導いただく先生」というイメージを抱いている人は少なくないだろう。費用もいくらかかるのものなのか、さっぱり検討がつかない。
債務整理委任後も、「弁護士に質問したり、希望を言ったりして良いのか、そんなことをすると、弁護士の機嫌を損ねてしまうのではないか」といった心配をして相談してくる人が少なくない。そういう人は、意を決して弁護士に相談に行った時に、当初のイメージ通りの威圧的な態度で接されたのだと思う。
普通の企業は広告を出したり、自社のイメージアップにつとめるのが当たり前なのに、弁護士や弁護士会にそういう努力は見られない。とても「身近に感じてもらおう」という気があるとは思えない。わざと一般の人と距離を置こうとしているようにすら思える。
最近は法律を扱ったバラエティ番組ができたりして、少し「顔やキャラクターの見える」弁護士も出てきたような気がするが、それでもまだまだほんの一握りに過ぎない。
そんな弁護士に対する一般的なイメージがあるからこそ、優しい口調で自分から電話してきてくれる「自称弁護士」にあっさりと騙されてしまうのではないだろうか。
私の弁護士さんは、威圧的なところなどまったくない弁護士さんだし、このサイトを開いて、債務整理を扱う何人かの弁護士さんともお知り合いになれたが、みなさん債務者のことを第一に考えてくれる、熱心で親切な弁護士さんばかりだ。
しかし、そんな弁護士さんたちの熱意を享受できるのは、実は「弁護士に会いに行く」という、一般庶民にはかなり高い敷居を、自分の力で乗り越えることができた人に限られている。
このようなサイトが、少しはその敷居の高さを下げることになっている、と言う自負はあるのだが、やはり弁護士さん自身も、敷居を取り払う努力をして欲しいな、と思う。
本物の弁護士への敷居が高いからこそ、弁護士を騙ったヤミ金業者が捏造する、低い敷居の方にフラフラと誘い込まれていってしまう債務者は決して少なくないと思う。
イラクの自衛隊派遣の法案を巡って国会が荒れた後、民主党と自由党の合併が発表され、更に宮城で大きな地震が起こり・・・と次から次へと起こる大きなニュースのために、ひっそりとしか報道されなかったが、いわゆる「“ヤミ金”規制法」が、25日の深夜に参議院で可決された。
掲示板でも少しこの話題が出た時にも触れたが、これでヤミ金の被害が減る、というような安心感を得ることはとてもできない。
詳細な内容が報道からでは把握できないのだが、上記の記事などを見ると、だいたい以下のようなものだ。
●「ヤミ金規制法」という新しい法律ができたわけではなく、出資法と貸金業法の改正である。
●無登録業者の罰則強化
●貸金業登録時の要件強化
●あらゆる貸付で109.5%の利息は無効となり、元本のみ返済すればよい
まず「無登録業者の罰則強化」についてだが、登録していない業者が「商売として」お金を貸すことはもともと禁止されている。今回は、無登録業者が「商売として」お金を貸した場合の罰則が大幅に強化された。
「商売として」としつこく強調しているのは、「貸金業者」とは、お金を貸すことを生業としている業者のことであって、個人間の貸借は含まれないからだ。もともとヤミ金は、一度に数万円しか貸し付けない。「ちょっと知り合いに頼まれて、個人的に貸した」という言い訳が通じなくもない。表向きは別の商売をしていれば、「貸金」ではなく「売掛金」だと言うこともできる。つまり、自ら「私は無登録の金融業者です」などとわざわざ認めなくとも、何とでも言い訳を作ることができるのだ。
もちろん、無登録で貸し付けて暴利をむさぼる業者を野放しにしておくわけには行かないので、この罰則強化にも意味がないとは言わないが、これだけではまったく不十分なのだ。
実際、最近のヤミ金は、「お金を貸す」というスタイルを取らずに、架空請求など、詐欺に近い手法を取り始めているところもある。これば詐欺罪で取り締まれるから良い、ということなのかもしれないが、何かしらの対策を講じないと、「貸付」というスタイルを取らないヤミ金が増える一方のような気がする。
また、無登録業者が「お金を貸します」という広告宣伝をするだけでも、処罰の対象になるらしい。
しかし、これで取り締まれそうなのは、電柱に広告を張っている090金融くらいのものだ。
もともと、ほとんどの新聞や雑誌では、無登録業者の広告出稿は自主規制している。このためヤミ金でも貸金業登録を行っている業者はたくさんある。また、電話での勧誘も「広告宣伝」には違いないが、これをどこまで取り締まることかできるのかは疑問だ。
そうなると、次の「貸金業登録の要件強化」というところが、ヤミ金の安易な貸金業登録を防ぎ、結果として広告出稿も減る、ということになりそうなものだが、これも本当に意味のある「要件強化」なのかどうか疑問だ。
現在の貸金業法では、5万円程度の登録料を払えば、法人でも個人でも簡単に登録ができる。一応審査などはあるようだが、過去に登録を抹消されでもしなければほぼ通るようで、自分が過去に登録を取り消されたとしても、部下の名前を使って再度登録する、などということは簡単にできそうだ。
今回の「強化」の内容は、報道などを見るだけでは具体的にはよくわからないのだが、上記の記事によれば、「犯罪歴のある業者の登録拒否期間を3年から5年に延ばした」とか、「暴力団関係者の登録は拒否する」などで、「抜け道」はいくらでもありそうだ。
もともと、貸金業がたったの5万円程度で開業できてしまうシステムがおかしいのだ。「登録」というのは「許可」とは違って、一方的に「貸金業を開業します」という「連絡」をするようなものだから「審査」などはない。「許可」とか「免許」になると、一定の要件を満たしているかどうかの審査があるので、必ずしも開業できるとは限らない。法案作成の段階では、貸金業も登録制ではなく、許可制にする案も出ていたようだが、結局見送られた。
たとえ登録制のままであっても、強化するならもっと厳しい強化はできないものかと思う。
たとえば、同じ登録が必要な業種に旅行業がある。
旅行業の場合、業務の範囲や内容によって一種から三種までに分かれているが、海外旅行、国内旅行の主催ができる第一種を例に取ってみる。
まず、本社だけでなくすべての支社・営業所に「一般旅行業務取扱主任者」という国家資格を持った人を配置しなければならない。また、会社の資産が3000万円以上なくてはならず、更に預託金(保証金)として、7000万円を国土交通省に預けなければならない。
これだけの人材とお金を用意しなければ「登録」できない旅行業に比べて、貸金業はお小遣い程度の資金があれば誰でも開業できてしまう。資格者も一切必要ない。あまりにも「お手軽」なのだ。
せめて法人格に限定する、1000万円単位の預託金を義務付ける程度のことをしてもらわないと、一業者が複数の名前を使い分けて登録するなど、業者の乱立が進む一方だ。
最後に「109.5%以上の貸付を無効とし、元本のみを返済すればよい」というくだりだが、これについては「何を今更」という感が否めない。
出資法にはもともと109.5%以上の利率は無効だ、と書いてある。
しかも109.5%という高利が認められているのは、日掛金融業者と、貸金業者「以外」の貸付、そして貸金業者が貸金業法43条の見なし弁済規定をクリアして行った貸付に限られている。
通常の「商売として」お金を貸している金融業者に定められた利息の上限は29.2%であることは、FAQなどにも書いてある通りだ。
それを何故今更、109.5%などという、特別な場合の利率を持ってきて「無効」だと強調しなければならないのだろうか。
「いくら高利で貸し付けても、そんな利息は無効ですよ」ということを言うためなのだろうが、逆に言うと、「貸金業登録をしていない人なら、109.5%までは利息を取って良いですよ」ということを改めて周知したことになってしまうのだ。しかも、さらに問題なのは無効になるのは利息だけ、ということだ。
日弁連などが「出資法違反の貸付は元本も利息もすべて無効」という意見を出していることは、FAQにも書いたとおりだ。
「借りたのだから、元本を返すのは当然」だという考え方ももちろんあるだろうが、なぜ日弁連が「元本も無効」と主張するかというと、貸す側にとっては、どんなに法外な利息を付けて貸したお金でも、少なくとも元本だけは返してもらえることになるからだ。
つまり、儲かりはしなくても絶対に損はしない、ということだ。
この時代に、まったくノーリスクの商売なんて、そうあるものではない。貸金業は赤字になる心配をまったくしなくて良い、実においしいビジネスだということが、法律に明記されてしまったのだ。
民法の解釈で、元本無効を主張することもできるようなのだが、余程熱心な弁護士にがんばってもらわないと、たとえヤミ金の被害にあっても、元本だけは返済する、という風潮が主流になってしまうのではないだろうか。
このように、報道を見る限りでは、この「“ヤミ金”規制法」の成立によって本当に苦汁を舐めるのは、「私は無登録の貸金業者です」堂々と公表して貸金業を営んでいる人だけあって、それ以外のヤミ金にとっては、いくらでも抜け道はある。むしろ、高利の貸付でも元本保証をしてもらって、喜んでいるかもしれない。
こんな法改正をするのなら、利息制限法に罰則規定を設けるなど、他にすることがあったのではないかと思う。
この法律がどのように運用されていくのかは、しばらく見守るしかないが、やはりどう考えてもこれでヤミ金が減るとはとても思えない。
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